*****はしっきれの手紙*****
とめどなくとりとめなく流れ続ける思考をよそに、体はいつの間にか獄寺の部屋へ到着する。
チャイムを押すと不機嫌そうな声が扉の向こうでした。
自分だということを伝えると、罵声をあびせられた。
「何の用だ?」
「これ、さっきの寿司!たくさんあっただろ?せっかくだから獄寺んとこにも持ってけってツナがさ・・」
獄寺の低い声が響く。
「10代目をてめーの都合のいい口実なんかに使うな」
「そーじゃーねーって、ほんとにツナがそういったんだぜ?とにかくあけてくれよ」
「帰れ」
それまでの態度との急変に理由もわからないままでまたいきなり家へと押しかけてきたことを獄寺はいらついていた。
「なんで怒ってんの、獄寺」
「誰が怒らせてっかわかんねーのかよ!」
ドアを蹴る大きな音が響く。
「ずっと無視やらわけわかんねーことしやがって・・・」
「だからさ、俺あやまったじゃねーか・・・でもあれじゃやっぱいけなかったよな。
実はあれな、部活始まる前にダッシュで獄寺んちきて・・・けどちゃんと顔見ていわなきゃだよな」
いっていることがよくわからなかった。
「何のことだ」
「だからほら、今日獄寺の誕生日会の前にここのポストに俺手紙はさんどいたんだぜ」
新聞受け口に挟まっていた小さな紙切れを思い出し、取り出し口をあけるとそこにはルーズリーフ片が入っていた。
『ごめんな』
山本の文字でそれだけ書いてあった。
「なんだよこれ」
静かに獄寺の部屋のドアが開き、獄寺が出てくる。
「これ!これだけど、獄寺知らなかったから怒ってたのなー」
やや眉を寄せて、出てきた獄寺に申し訳なさそうな表情をする山本。
「けどこれだけでなんなのかわかるかってんだ」
「獄寺に悪いことしてたから、俺。だから謝りたかったのな」
先ほどの蹴り音を聞いて外の様子を見に人が出てきたため山本を自室へと招きいれた。
「・・・お前ここんとこずっと俺のことさけてたよな。それのことか」
「そうなのな、俺ほんとわりーことしちまったよな。」
「いきなりあんな電話までしやがって・・・」
あたかも獄寺が武を性欲処理につかっているだけのような言い草のあの電話。
玄関先で何度も謝って頭をさげる山本。
「あれは・・・ツナが獄寺の誕生日にパーティーやるなんていったからさ・・・」
「俺の方が先に考えてんのにって思ったらなんか悔しくなっちまって・・・」
意外な山本の言葉に獄寺は言葉を失う。
「獄寺のことだから、ツナのパーティーの方が大事だろ?そう思ったらなんか俺くやしくって、獄寺にすげーいやなこといっちまってさ」
心底悪かったと思って反省する態度だったが、それで怒りがしずまったわけではなかった。
「・・・あん時は俺のことなんだと思ってやがるとか思ったんだぜ」
「悪かったな・・・」
「・・・じゃ、お前はそういう捉え方で俺といるってことなんだろ?」
それまでの不安とモヤモヤした気持ちが一気にあふれて口に出る。
「そんなんじゃねーよ!!」
「それならわざわざ俺のとこなんかこなくったって、喜ぶ女のとことかいった方がいいんじゃねーの?取り繕ったりしねーでいいぜ?もうこのままどっかいけよ」
さらにまた余計なことが口から出る。
「獄寺!!!」
両肩をつかまれて強く壁に押し付けられる。
「ちがうぜ、俺、あんなこといっちまったの、ツナにヤキモチやいてたからだって!」
獄寺を見つめるまっすぐな瞳。
「ほんとは俺、今日いっぱい獄寺にしてやりてーことがあったんだぜ!けど、ツナんちでパーティーやるって一週間前に聞いたから、それができねーって思ったらイラついちまってさ!」
獄寺は誕生祝いのことを前日に聞かされたので、その前に山本がこんな思いをしていたなどとは思いもしなかったのだ。
「いつもみてーに毎日獄寺んちよってたら、俺絶対『行くな』って言いそうだったし、それじゃ獄寺が怒るだろうし、ツナにもばらさねーように頼まれてたからどうしよーもなくってお前のことさけてたのな」
正直な事のあらましに獄寺は山本の愛情を感じて恥ずかしくなり顔を背けようとする。
「こっち、向いてくれよ・・な?」
大きな手のひらに顔を挟まれ、いやおうなく山本の顔を間近で見つめさせられる。
見ていられなくなって固く目を閉じると、唇に優しい慣れたあたたかい感触が降ってきた。
そのまま唇を割ると山本の舌が押し入ってくる。
思わずもれる吐息。
少しだけ絡めると山本の唇は離れ、優しく獄寺を抱きしめた。
「・・・今からでも祝えよな」
「え?」
「・・・・・・俺だって」
楽しみにしてたんだぜと消え入りそうな獄寺の声が抱きしめた耳元にそっと聞こえる。
その言葉に山本は思わず獄寺を担ぎ上げて、ベッドへと導いた。
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